ここにある。

2016年夏。乳癌になっちゃったよわたし。

放射線治療5週目後半 善と悪

放射線治療5週目後半
~2017年2月17日

24回目
そろそろ家を出発しようという時間に
電車が人身事故で上下線運転見合わせというニュースがテレビで流れてた。
オーマイガー!!

遅刻するかもしれないことを念のため
電話で病院に伝えておいた。

結局いつもより20分くらい遅れて到着。
でも治療の時間には間に合ってたから
いつも通りに治療は受けられた。
ヨカッタヨー


帰りの電車では優先席に座った。

イヤホンつけて音楽聴いてたから
最初気づかなかったんだけど、
わたしの隣のもうひとつ隣の席に座ってるおばあちゃんが
ジェスチャーつきで1人で喋ってた。
結構大きな声。

なんかそういう人なのかと思って気にしないでいたんだけど、
聴いてる音楽の音の切れ目に
「あんなに若いのに なんたら~」
「どうたら~ 何のための優先席 」
て聞こえてきた。
時々こちらもチラチラ見てる。

あ、なになに?
もしかしてわたしのこと言ってんの?
と思ってイヤホン片方外しつつ
スマホ取り出してボリュームを下げよく聞いてみたら…

「何のために優先席があると思ってるのかしらね~
日本人じゃないから字が読めないのね~
なんでこんなところにあんな若い人が座ってんのかしら~
みっともないわね~」

と、独り言を装って、
そのおばあちゃん改めバーさんは
わたしのことを非難していた。


ところでわたしは生粋の日本人だけど、
もし外国人だったら何なのか。
字が読めなかったら何なのか。

わたしは流暢な日本語でバーさんに話しかけた。

「失礼ですけどわたしのこと仰ってるんですか?
わたし、体の具合がよくなくて、
今も気分が悪いのでここにいるんですよ」

ここで終わると思ったんだけど
そうはいかなかった。

「あら~!まぁ~!(←嘘つけ、というイントネーション」

ってなって、

優先席のステッカーに描いてあるハートマークに十字を見て。
ペースメイカーの印よ。
ペースメイカーに携帯の電波は悪いから
早く電源を切りなさい。
さっき携帯を出していたでしょう。
というかあなたがここに座るのはどうかと思う。
字が読めない、とかなんとか。
今度はこんこんと諭すように言われた。

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なんかさ。
こんなに言われてまでこの席にしがみつく気持ちもないし
席立っちゃってもよかったんだけど、
わたしだって人間だもの、イライラしてきて言い返した。

あ、でも年寄りをいじめる女と思われたらイヤだから
常に腰を低く優しい口調だったよ。


「混雑時には」電源を切るように、と書いてありますよ、と。
今は立ってる人もいないし混雑もしていません。
通話をしたり迷惑をかけているワケではないのだから、
電源を切らなくてもいいんじゃないですか?
あと、携帯の電波は今やペースメイカーに影響はないようですから心配には及びません。

ということをバーさんに。

一時期は電波がペースメイカーに影響するって言われてたけど
何年か前に影響なしってわかったんだったよね。
だからそんな放送もされなくなったし
ステッカーだって名残程度に「混雑時は」となったのを覚えている。

でも信じてもらえなかった。
イヤン。

でもまぁ仕方ないね。
揚げ足とってるみたいだったり
自分に都合のいいことをテキトウに言って
バーさんのこと丸めこもうとしてるだけみたいだったもんな。

短い時間にいろんな考えが浮かんでは弾け、、、
そんなことしてたら一気に気力なくなっちゃったよ。

もともと、バーさんはわたしが若いのに
優先席に座ってることを咎めていたワケで、
じゃあひとつでも信じておくれよと
バッグにつけてたヘルプマークを手に持ってバーさんに見せた。

わたしはこういう事情だから、
ここに座っていてもそこまで言われる筋合いはないということを知って欲しかった。

というかさっき口でも説明したんだけどな。
信じてもらえなかったみたいだから。

バーさんがペースメイカーの印と言っていたマークと似ているから、
(内部障害のマークだろうけど)
この赤いヘルプマーク自体を知らなくても
今までのやりとりの後ならなんとなく
意味もわかるんではないかと思って。

そしたら期待通りわかってくれたみたい。
少し黙ったと思ったらまた大きな声で独り言を言っていた。

「あら~!日本語って難しいわね~!
混雑時に切ればいいだなんて
こんな書き方はおかしいわ!
おかしいわよね~!
これじゃまるで……
日本語って難しいわね~!
そう思わない?」

と同意を求めてきたんで

「さぁ?」

と返しておいた。
まるで…なんなんだ?
日本語が難しいとか、アナタほんとに日本人なんですか?
と言いそうになってしまったけどやめといた。

バーさんはあら~!あら~!と言いながら
電車を降りていった。


すごく後味が悪かった。
わたし、こんなふうにバーさんを言い負かせたかったワケじゃない。
バーさんだってきっと悪い人じゃないんだろう。
マナーのなってない若いのを見つけて
ひとり立ち向かったくらいなんだから、
もともと正義感のある人なんだ。
ただ思い込みが激しいだけで。

乳腺にできた何かが良性か悪性か
というくらいにキッチリとは
世の中は善と悪だけでは分けられない。
わたしもバーさんも、悪じゃなかった。
なんなのかな。
ちょっと悲しくなってきた。

そしてこのやり取りをしている間
わたしとバーさんの間で
狸寝入りを決め込んでた白髪のおばあちゃんには申し訳なかったな。
真ん中に挟まれちゃってさ。
「妙なとこに居合わせちゃったな」
と思ってたろうね。
おばあちゃん、瞑想する石川五右衛門みたいになってたよ。
ほんとにゴメンなさい。

そして今になって思うのは
わたしがペースメイカーを使ってる人なんだと
あのバーさんに勘違いさせたかもしれないな。
ということ。
ただですら思い込みが激しそうなのに
間違った情報を植え付けてしまったようで
よくなかったかもしれない。

毎日何事もなく穏やかに通院をして治療を受け、
ただ普通に帰ってきたいだけなのに、
なんでこんなことになっちゃったんだろうな。

もうこれからは優先席には座らない。
トラブルの元になるもんな。
2時間立ちっぱなしでいるより消耗するよ。

ヘルプマーク、もっと拡がれ!とは思うけど
体調が万全でない今、矢面に立つ気にもなれない。

今週は通院もあと1回!
なるべく目立たないように
気配を消しながら通院しよう。


25回目

気温20度!
4月中旬並みだってさ。
春一番も吹いた。

あっちこっちでチャリンコ倒れてたり
飛ばされた洗濯物が落ちてたり盆栽が倒れてたり。

ほんとあったかいね~。
4月中旬てこんなあったかいんだっけか。
というかむしろ暑いくらいだよ。
上着は脱いで歩いた。

去年の今日は わたしの息子とも言っていいくらいのニャンコと
最後の日向ぼっこをして過ごしていた日。

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日をまたいだ翌日の早朝にニャンコは旅立った。


病院の近くに、庭に梅の木を植えているお宅があって
毎日すごくいい香りがしてるんだよ。
ニャンコを見送った日も梅が香っていたっけね、
と思ったら泣けてきた。

ニャンコの大好物だった
エビとホタテのお刺し身を買って明日会いに行こう。

ニャンコよ。
わたし まんまと生き延びてしまったよ。
でもまだやることあるからね。
まだそちらには行けないな。
もう少し待っててね。

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さて。
放射線治療 5週目が終わったよ。
あと1週間だ。
ワーイ‹‹\(´ω` )/››‹‹\(  ´)/››‹‹\( ´ω`)/››ワーイ